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印南敦史の「毎日書評」

なぜ「売れるアイデア」は居酒屋で語られるのか?

author 印南敦史
なぜ「売れるアイデア」は居酒屋で語られるのか?
Photo: 印南敦史

売れ型 誰でも売れるアイデアが湧き出す思考法』(小西利行 著、PHP研究所)の著者は、博報堂でコピーライター、クリエイティブ・ディレクターとして実績を積み、独立した現在は事業開発やブランディング、コンセプトメイキングの仕事に携わる人物。

長いキャリアのなかで考えていることはずっと変わらず、それは「どうしたら人の心を動かし、行動させられるか」ということなのだそうです。難しそうにも思えますが、重要なポイントは「パターン」の存在。

ゴールまでの道筋を描く「パターン」に沿って考えれば、アイデアの質も量も比較にならないほど向上するというのです。そしてそれだけで、効果のあるアイデアをスムーズに考えられるようになるのだとか。

ここでいう「パターン」とは、過去に売れた商品や優れたアイデアから、成功の方法を抽出し、別の仕事でも再現できるようにした考え方のルールのようなもの。

言わば、「売れるアイデア」をつくる「公式」です。

僕はそれを「型」と呼び、すべての仕事で使っているのです。(「はじめに 売れるアイデアには『型』がある」より)

その「型」はアイデアのプロのためのものではなく、誰もが使え、アイデアを生み出せる方法。

そこで本書では、あらゆるビジネスに応用できる「売れ型」の基本をはじめ、売れるアイデアの「考え型」「見つけ型」「つくり型」「広げ型」「続け型」などを紹介しているわけです。

しかし、そもそもアイデアとはなんなのでしょうか? この問いに対する答えを見つけるために、第1章「売れるアイデアの『考え型』 〜不満から幸せを生もう〜」に焦点を当ててみたいと思います。

アイデアは「世の中の滞りを解決する発見」

「Idea」には、考え、思いつき、着想、意見、見解などいくつもの意味がありますが、著者の場合はアイデアを「世の中の滞りを解決する発見」と定義づけているのだそうです。この「滞り」は、「課題」や「問題点」といいかえることもできそうです。

たしかに滞りは、あらゆるビジネス領域、職種、レイヤーに存在します。

著者が仕事として関わるのは「商品開発がうまくいかない」「サービスのユーザーが増えない」「社内のコミュニケーションが悪い」といった滞りだそうですが、ビジネスに関することだけではなく、いたるところに滞りはあるもの。

ただし滞っている物事は既存のやり方ではうまく進まないので、新しい着想、つまりはアイデアが必要になってくるわけです。

ここでまず知って欲しいのは、アイデアはデザイナーや建築家など、クリエイティブなイメージのある仕事だけに必要なものではない、ということです。(53ページより)

たとえば、あまりアイデアとは関係がなさそうな総務部にだって滞りはあるはず。もちろん家庭内にも同じことがいえますし、アイデアと無縁な人など存在しないわけです。したがって、どんな人もアイデアを出す必要があるのです。

「そんなことをいわれても、アイデアなんか出せない」と思われるかもしれませんが、滞りを解決したいのであれば、どんなものでもアイデアになるはず。技術や専門知識がなかったとしても、たったひとことがアイデアになる場合もあるわけです。

つまりアイデアは、遠くにあるものでも、立派な概念でもなく、すぐそこにあって誰もが考えられること。だから難しく考えず、怖がらず、アイデアを楽しく生み出していくことが大切なのだと著者は主張しています。(52ページより)

売れるアイデアは「居酒屋で語られる」

では、「売れるアイデア」とはどういうものなのでしょうか? このことについて、著者が辿り着いたアイデアの理想像は「居酒屋で語られるアイデア」なのだそうです。

とはいえ場所は居酒屋に限定されるわけではなく、更衣室でも休み時間の教室でも、要は人が集まって雑談するようなところ。そういうところで、みんなの口の端に上るようなアイデアが重要だということ。

いまの時代でいえば、「思わずツイートしたくなるアイデア」ともいえるかもしれません。

皆さんも経験があると思いますが、「あの新人の発想いいよね」とか「例の場所を店にするとは思いつかなかった」とか「昨日の部長の話、マジやる気出た」という社内の話も居酒屋で話しますし、盛り上がったりもします。

やはり、アイデアは規模の大小ではなく、「滞りを解決する発見」であることが大切

その発見があれば、ワイワイしている中でも人々の心を動かし、口の端に上り、会社や家庭、そして社会へと広がっていくのです。(56ページより)

「ブランドとはなにか?」という問いの答えすら、「居酒屋で語られるもの」だと著者は考えているのだといいます。たとえば飲み会の席でバッグや化粧品などを見たとき、わざわざその魅力を語りたくなるものはまさにブランド。

「あのブランドの新しい財布いいよね」というように、その場に商品がなくてもそのよさが語られるようになれば、超一流のブランドといえるというわけです。

だからこそ著者は、どんなに高級な商品でも、企業の理念でも、国の施策でさえ「居酒屋で語られる」ことを目指すわけです。もちろん、一般の人が居酒屋で話題にしたくなるほどのアイデアは、そうそう簡単に生まれるものではないでしょう。しかし、“それを目指すこと”が大事なのです。

ちなみにアイデアを考える際、完璧なアイデアを目指すべきではないそうです。なぜなら人は、完璧なものにはあまり興味を持たないものだから。

興味を持ってもらうには「隙」が大切。つまり、「ツッコミどころ」をつくる必要があるのです。ツッコミどころがあるということは、誰もが関与できるということですし、つい話したくなるからです。(59ページより)

世の中の多くの人を巻き込むためには、難しい理論をつくったり、苦しみながら解決する方法を模索するより、できるだけ楽しく、気持ちよく課題を解決するアイデアを生んでいくほうがいいという考え方。

ツッコミが入るなかにほんの少しでも実現性が見えれば、それは一気に人を惹きつけるアイデアになるわけです。(55ページより)

本書で紹介されている「型」は、すべて著者が実際に使い続けているもの。だからこそ机上の空論とは違い、ビジネスの最前線で使えるわけです。

どんなビジネスでも活用できそうなものばかりなので、参考にしてみてはいかがでしょうか?

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Source: PHP研究所

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