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印南敦史の「毎日書評」

職場の問題解決に必要なのは、上司の「聞く力」と「共感力」

author 印南敦史
職場の問題解決に必要なのは、上司の「聞く力」と「共感力」
Photo: 印南敦史

人事コンサルタントである『リーダーシップがなくてもできる 「職場の問題」30の解決法』(大橋高広 著、日本実業出版社)の著者は、クライアントと個別の面談を重ねるなかで実感したことがあるそうです。

「日本の職場に、リーダーシップがある上司は非常に少ない」ということ。

それは構造的な問題で、本人がリーダーシップについて自分で学ぼうとしても、書籍などで展開されているのは「人を動かす強さ」を求めるものばかり。

しかし精神論は再現性が低いため、上司の仕事を精神論で考えてしまうとうまくいかないわけです。

にもかかわらず、日本の多くの職場はこの精神論から抜け出せず、負のスパイラルに陥っているというのです。

私から提案があります。

これからの上司・管理職のスキルアップは、リーダーシップという「精神論」ではなく、上司の仕事を遂行する力を身につけるという「方法」で考えてほしいということです。(「はじめに」より)

そこで本書では、上司の仕事を職場の問題の真因を把握するために、

第1ステップ「部下の本音を聞き出すこと」

第2ステップ「部下に不利な影響が出ないように、聞き出した情報を社内で共有すること」

第3ステップ「部下の同意と会社の許可を得た上で、具体的に職場を改善すること」

という3ステップで解説しているのです。

この3ステップをきちんと繰り返し実践している上司は、強力なリーダーシップがなくても、部下と信頼関係を築けるそう。

ステップ1について触れた第3章「誰でもできる! 職場の問題を『聞き出す』技術」のなかから、2つのポイントを抜き出してみましょう。

ここで紹介されているのは、管理職や上司が、職場の問題を聞き出すための具体的なテクニックです。

上司沈黙法

仕事ができる上司には、部下に対して一方的に話し続けてしまうという共通の傾向があるといいます。

しかし、せっかく面談をしても、それでは本末転倒というもの。そこで著者は“おしゃべりな上司”に対しては「とにかく黙ってみてください。黙って部下の話に耳を傾けることが大切ですよ」と注意を促しているそうです。

仕事ができる上司が話しすぎてしまうのは、部下の話を聞いている途中で「結論が先にわかってしまう」から

すぐに頭のなかに答えが出てしまい、答えをいいたいという気持ちを抑えられず、よかれと思って口にするというということです。

しかし、上司のその結論が正しかったとしても、悩みを相談しようとしていた部下は、一方的に結論を押しつけられたような気分になってしまいます。

そのため「この上司は自分の話を聞いてくれない」と感じ、信頼関係が損なわれていくわけです。

部下、特に若手社員の中には、解決法を示してほしいというより、自分の話を聞いてほしいというニーズが相当あります

ですから、話を十分に聞かないまま答えを出すと不満のもととなります。(90ページより)

そこで著者は、部下をクライアントだと考えることを勧めています。上司と部下という関係を考えた場合、どうしても「身内」のような気がして、聞く姿勢が弱くなってしまいがち。

しかし、部下が気持ちよく働いてくれて、成果を出してくれることは、上司の利益に直結します。

なぜなら会社は、上司の評価を部下の実績も含めて判定しているから。したがって部下をクライアントだと考えれば、沈黙する力が湧いてくるというのです。(87ページより)

共感エピソード法

上司は部下のために話しやすい雰囲気をつくることが求められますが、そこで重要な意味を持つのは「共感」。

そのため著者はクライアントの管理職に対し、共感をつくる手段として「ご自身が若いときに苦労した経験を、誰もが共感できるエピソードとして、いつでも部下に話せるようにしておいてください」と伝えているのだそうです。

「私も若い頃は○○がうまくいかずによく怒られて悩んでいたんだけど、□□することで乗り越えることができたんだ」

こういったエピソードを伝えることで、部下は「そんなことがあったんだ」と感じ、お互いに共感できます、(101〜102ページより)

「上司の昔話なんて興味ないのでは?」

「いまと昔では時代背景が違うんだから、部下に話してもピンとこないんじゃないの?」

そのように考え、自分の半紙をすることに尻込みする傾向もあるとか。しかし著者の見聞きした経験では、上司の経験を踏まえた“成長につながる話”を聞きたがっている若手は多いそうです。

「上から目線」でいわれると響かない話であっても、「若かったころの自分」という、部下と同じ目線で話をすると、共感力がアップするということ。

だからこそ、上司には臆さず自分のエピソードを開示してほしいのだと著者は強調しています。「とにかく苦労をすることが大事」というような精神論ではなく、成長につながる具体的なポイントがわかる内容を話すことが大切なのだと。

そこで、あらかじめ部下に話すエピソードを準備しておくといいそう。

部下の普段の仕事ぶりをもとに、自分が若いときに似たような悩みを経験していなかったか振り返ってみて、経験をストーリー化し、話せるように練習しておくということ。

ポイントは、失敗した経験やつらかった経験からなにを学び、いまどのように活用しているか。

そして、少しだけ自分のエピソードを開示したら、あとは聞き役にまわる。そんな流れを意識してみるといいということです。(101ページより)

本書で明らかにされているメソッドについて著者は、「部下の本音を聞き出し、職場の現状を把握したうえで、有効と考えるものから取り組んでほしい」と記しています。

すなわちそれが、職場の問題解決は「部下の本音を聞き出す」ことから始めてほしいということの理由。働きがいのある職場をつくっていくために、参考にしたいところです。

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Source: 日本実業出版社

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