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「生産性向上のプロ」がコロナ禍でやめたこと

「生産性向上のプロ」がコロナ禍でやめたこと
Image: FTiare/Shutterstock.com

パンデミックで一変した生活。その中で、仕事や暮らしに対する考え方が変わってきた人も多いでしょう。それは一般の人だけには限りません。

「生産性向上のプロ」がプロセス重視に

ティモシー・フェリスさんといえば、『「週4時間」だけ働く。』などの著書があり、アメリカでは効率化や生産性向上のプロとして自分のブランディングに成功した人というイメージです。


しかし、彼でさえもパンデミックで自分の考え方が変わってきたそうです。

多くの著書で、いかに効率よく生産性を上げ、最適化するかを実体験に基づいて説いてきたフェリスさんは、GQのインタビューでこう述べています。

効率を最大化することにはフォーカスしていません。なぜなら、「何のために?」と問わずにはいられないからです。

(中略)意義あることには簡単に測定できないこともあるのですから、メトリック云々とは言いません。無理に測ろうとして、1〜10のスケールを当てはめてみてもいいんですけどね。

だけど、その一瞬一瞬、正直にどう感じているかに目を向けることが大事です。

良いのか悪いのか、メリットがあるのか悪影響があるのか、健康的なのかそうではないのか、心の奥底ではわかっているはずなんです。それには深い分析などは要りません。

(「GQ」より翻訳引用)

プロセスを楽しむためのポイント

最適化のプロから、思いがけないこの言葉。

とは言っても、これまで効率や生産性を重視してきた(そうするべきだと教えられてきた)社会人にとっては、プロセスを純粋に楽しめることをどうやって見つけるのか、どうやって楽しむのかと迷うことがあるかもしれません。

殊に、仕事とプライベートが混在する自宅では、仕事に対する思考癖が私生活を知らず知らずの間に侵食しているかもしれません。

Mind Body Greenでは、ソーシャルワーカーのムーニーさんが、プロセスの楽しみ方についてアドバイスをしています。

彼女によれば、プロセスは短距離ではなくマラソンのようなもの。ゴールや結果ばかりにとらわれていると、レース自体を楽しむことが疎かになると言います。

敢えていえば、目指す目的や期限、結果抜きで、その行動をするというプロセス自体を楽しむことが、ある種の目標になっていると言えるでしょう。

ただし、それを目指してその行動を起こすのではありません。プロセス優先です。

パンデミック初期に流行したことを振り返ってみる

ムーニーさんの発言に、去年の春、新型コロナウイルス感染症が拡大した時に流行ったことを思い出しました。

アメリカでは、パン作りや料理(実益を兼ねてはいますが)、ジグソーパズルなどが流行ったというニュースが飛び交いました。

必要に迫られての活動もあったとは思いますが、実際にプロセスを楽しめたことからの流行だったと言えるのではないでしょうか。

しかし、今では昨春の自宅待機時期よりは普通に戻った感があり、思考の癖はなんとなくまた最適性や効率の方向へ戻りつつあるような気がすることもあります。

そういえば、ジグソーパズルやボードゲームのようなアナログゲームだけではなく、「あつまれ どうぶつの森」に代表されるデジタルゲームの人気もありました。

WIREDの記事のように、「楽しんでプレイした結果、癒された」という内容の記事もいくつか目にしました。

はじめに目的ありきではなく、楽しいプロセスがポジティブな影響につながった例だと言えます。

積極的にプロセスを楽しめる活動を

昨年秋に、ふと手にした本がありました。それは、岩波書店の井伏鱒二訳『ドリトル先生』シリーズです。小学校時代に愛読した本ですが、子ども用にと買ってありました。

ある日、手元に読みたい本がなく(だいたいは仕事や自己啓発関連)、「ああ、これは昔すごく好きな本だった。また読んでみようかな」と思ったのです。それは、純粋にプロセスを楽しむ活動でした。

そして、その結果として、自分にとってはメンタルや感情の休養にもなっていたことに気づいたのです。

(ただし、その一石二鳥を目指して読書をしていたわけではないのがポイントです。そのような効率性を目指すとプロセスそのものが楽しめなくなりそうですし、生産性から抜けられない考え方が露呈してしまいます。)

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ですから、幼い子どもが夢中で遊んでいる様子に注目すると気づきがもらえると思います。あれこそプロセスを楽しむ姿そのもの。

私たちが効率や生産性などを考えながら生きていなかったころ、つまり子ども時代に戻れるような活動がおすすめ。

楽器を弾く、音楽を聴く、絵を描く、ビデオゲームをする、マンガや本を読む、映画やテレビを見るなど、プロセスそのものが楽しみのもとになる活動はたくさんあります。

前述のムーニーさんは、プロセスを楽しむためには意識を心に向けることを奨励しています。

でも、本当にプロセスを楽しんでいる時には、わざわざ自分の感情へ意識を向けたり、マインドフルネスの実践などを意識する必要はありません。

楽しくて好きならば、時間をかけたって良い。効率が悪かろうが、具体的な成果がなかろうが、下手であろうが、楽しければ良い。そう思いませんか?

“プロセスを楽しむ”を取り入れる時代に

2020年の春には、「1年後には平常に戻っているだろう」と特に根拠もない淡い希望を抱いていました。

そして1年後の今、ワクチンの接種が始まって、ニューノーマルの新しいフェーズに入っていることは実感できますが、それでもまだマスクの着用や手洗い、社会的距離の実践が必須という状況は変わりません。

そんな生活の中にはもちろん効率や生産性を重視すべき部分はあります。

ただ、最適性や効率性を追いかけることに疲れた時、プロセスそのものを楽しめる何かを持っていることは、コロナ禍2年目、心身健康で自分らしい生活を営むためには不可欠でしょう。

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Image: FTiare/Shutterstock.com

Source: Inc., GQ, Amazon.co.jp, MindBodyGreen, WIRED, People

ぬえよしこ

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