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肉屋で、野菜のエキスパートになれ。仕事で抜きん出るための「ラストマン戦略」とは

肉屋で、野菜のエキスパートになれ。仕事で抜きん出るための「ラストマン戦略」とは
Photo: 印南敦史

私は大学卒業後にサン・マイクロシステムズに入社し、その1年半後にアプレッソという会社を立ち上げた。

データ連携ソフト「DataSpider」の開発を指揮しながら、13年間、代表を務めた。業績も順調に推移していった。 2013年、DataSpiderの代理店であり、データ連携ソフトを自社に持ちたいと考えていたセゾン情報システムズから資本業務提携の提案を受けた。

セゾン情報システムズは、ファイル転送ソフト「HULET」を持ち、この分野で世界第3位の売上を誇っている。

ファイル転送ソフトのHULETを持つセゾン情報システムズ。 データ連携ソフトのDataSpiderを持つアプレッソ。 この2社が合体すれば、最強の会社ができる。 そう考えて、よりスケールの大きい仕事をすべく、アプレッソはセゾン情報システムズのグループ会社となった。

それを契機に、私はセゾン情報システムズのCTO(最高技術責任者)を務めることになった。(「はじめにーーITベンチャーと老舗金融企業で学んだこと」より)

つまり『その仕事、全部やめてみよう 1%の本質をつかむ「シンプルな考え方」』(小野和俊 著、ダイヤモンド社)の著者は、ITベンチャーと老舗金融企業という、タイプの異なる企業で学び、実績を積み上げてきたわけです。また、プログラマーとして仕事をしてきたことからも、多くを学んだといいます。

そうした学びのなかから見えてきたのは、ベンチャーや大企業を問わず、どんな仕事にも共通する「仕事を合理化するポイント」

逆にいえば、共通する「無駄」があるということ。そこで本書では、「やめるべき仕事・考え方」をさまざまな角度から検証しているのです。

きょうは、ひとりひとりの特性に合わせて能力を伸ばしていくことの重要性を説いた第3章「『ラストマン戦略』で頭角をあらわせーー自分を磨く」に焦点を当ててみたいと思います。

著者がここで説いているのは、日々の生活のなかに「見せ場」をつくり、「ラストマン戦略」でユニークな力を高く伸ばしていくことの重要性です。

「ラストマン戦略」で頭角をあらわせ

新人は一般的に、「1日も早く先輩の力になれるようにがんばろう」と考えるもの。もちろんそうした姿勢は謙虚であり、ある種の美徳であるとも言えるかもしれません。

しかし、それを認めながらも、著者は違う考えを重視しています。「ラストマン戦略」がそれ。

「ラストマン戦略」とは、グループ内で自分が一番になれそうな領域を決め、「あの人がわからないなら、誰に聞いてもわからないよね」という、いわば最後の砦とも言うべきスペシャリストを目指す成長戦略だ。(106ページより)

「グループ内で一番」というと難しそうに感じるかもしれませんが、「グループ内」は課や部などの小さな単位でOK。

そこでラストマンになれたら、次はさらに一段大きな組織でのラストマンを目指す段階。これを繰り返していくということです。

逆に、もしも小さなグループでラストマンになれなかったとしたら、その領域は向いていなかったということになるはず。したがって、そういう場合は“ラストマンを目指すべき領域”を変えていけばいいのです。

なお、ここで著者は、自身の失敗談を明かしています。

先にも触れたとおり新卒で外資系企業のサン・マイクロシステムズ(以下、サン)に入社したわけですが、その時点では「プログラミングができる会社」だと勘違いしていたのだというのです。

サンはJavaというプログラミング言語を開発した会社ですが、日本におけるサンの仕事の多くは、プログラミングではなくハードウェアの販売。たしかにそれでは、プログラミングの仕事ができる可能性は低くなるでしょう。

著者はこのことを「野菜を売りたくて八百屋に入ったはずなのに、実は肉屋に入ってしまった」と表現していますが、同じ勘違いをした人は同期にも何人かいたそう。

その際、対応はおもに次の3つに分類できたといいます。

① 肉屋に入ったのだから肉屋を目指す

② 八百屋への転職活動を開始する

③ 肉屋の中で野菜についてのナンバーワンを目指す

(108ページより)

いちばん多かったのは①。入社当時、プログラミングについて熱く語り合った同期の大半が、いまではハードウェアのスペシャリストとして活躍しているそうです。

一方、ラストマン戦略とは、③の「肉屋の中で野菜についてのナンバーワンを目指す」にあたるわけです。(106ページより)

肉屋のなかで、野菜のエキスパートになる

なにしろ売ろうとしていたくらいなのですから、野菜については肉より詳しく、しかも情熱があるわけ。

つまり、肉屋のなかで「野菜について聞きたければこいつに聞け」と言われる状態に持っていくのは、比較的簡単だということです。

とはいえ、あくまでも「比較的」簡単なだけであり、組織内でトップになるのはなかなか困難でもあります。

著者の場合、「肉屋のなかの“野菜のラストマン”を目指してみてわかったのは、「肉屋のなかにも野菜に詳しい人がたくさんいる」ということだったといいます。

そこで、「野菜についてのラストマン」ではなく、「白菜についてのラストマン」「京人参についてのラストマン」という、“より細分化された分野でのラストマン”を目指すことに。

具体的には、プログラミング全般で社内のラストマンになるのは難しそうだったので、正式な仕様が決まったばかりで社内に詳しい人がほとんどいなかった「XML」という分野に焦点を絞ったのだそうです。

その結果、約半年後には「白菜のスペシャリスト(XMLに詳しいエンジニア)」として、シリコンバレーにあるサン本社で仕事をする機会を得ることができたのだといいます。(108ページより)

ラストマン戦略の4つのメリット

入社直後の新人でも、チームに転属したばかりの人でも、ラストマンを目指すとなると周囲から頼られるもの。

「わかりません」とは言いづらくなるため、わからないことは自分で解決しようという自主性も身につくよう。それが本人のレベルのみならず、チーム全体のレベルを引き上げていくことになるのです。

そんなラストマン戦略には、次の4つのメリットがあるそう。

① 最初の目標が低いので実現できそうな期待が持てる

② 低い目標でさえ実現できない場合は早めに方針転換できる

③ 目標が段階的に高くなっていくため、自信をつけながらストレスが少ない形で成長していくことができる

④ 新人であっても周囲の人たちから頼られ、自らも「このテーマは自分がラストマンなのだ」と誇りを持って仕事にとり組むことができる

(110〜111ページより)

だからこそ、自分自身の成長戦略、あるいはチームメンバーの育成戦略に思い悩んでいる人がいたら、ラストマン戦略を活用できないか検討してみてほしいと著者は主張しています。(110ページより)

たとえばこのように、仕事のあり方を問いなおすきっかけになる考え方が多数紹介されています。

ビジネスパーソンとしてのスキルを向上させるために、手にとってみてはいかがでしょうか?

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Source: ダイヤモンド社

Photo: 印南敦史

印南敦史

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