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外国人だからこそわかる日本人の「組織力」のポテンシャルとは?

外国人だからこそわかる日本人の「組織力」のポテンシャルとは?
Photo: 印南敦史

はじめての著書『日本人が世界に誇れる33のこと』(あさ出版)を出版してから6年が経ちました。その間に日本へ訪れる外国人観光客や留学生、日本に住む外国人が増えました。

街中では多言語表記が目に入るようになり、10年前には絶対なかったような、国際的な環境となっています。 小さな村に行っても外国人が当たり前におり、日本語を流暢に話す外国人が大切な労働力となっています。

外国から来る多くの人は、私と同じように、日本のことを理解しようとして、日本を大切に思っているのです。 まさに日本は本格的な国際化時代に突入していると言えるでしょう。(「はじめに」より)

このように記しているのは、『日本人がいつまでも誇りにしたい39のこと』(ルース・マリー・ジャーマン著、あさ出版)の著者。

大学卒業後にリクルートに入社し、以来30年間にわたって日本に滞在し、現在もさまざまな事業に関与している人物です。

そんな立場にいるからこそ感じるのは、「日本人の多くは外国人が来日する理由や、日本が好かれていることを不思議に見ていて、それらの本質に気づいていない」ということ。そこで本書においては、著者自身の目から見た日本の魅力を伝えようとしているわけです。

きょうは第4章「日本人が知らない日本人のほんとうの強さ」のなかから、いくつかのポイントを抜き出してみたいと思います。

「ダメもとでやる」という究極のプラス思考

日本でよく聞く「ダメもと」という言葉は、英語で「Assuming failue」という表現になり、直訳すると「失敗の予測」というような意味になるのだそうです。

「もともとがダメなのだから、うまくいかなくたって当然だ」という考え方。

しかし著者は長らく、この言葉を後ろ向きでネガティブな姿勢だと勘違いしていたのだといいます。なぜなら、「うまくいかない」ことを前提にして動くなど考えられなかったから。

というのもアメリカ式の営業だと、アポイントの段階で、すぐに「受注済み状態」や「受注が決まった姿」をシミュレートするというのです。

「大成功する」という前提で、すべてのものごとに取り組むということ。そのため「ダメもと」で動いたりすると、「ネガティブシンキング」だとして叱られることに。自分を、可能性を、サクセスを信じるのがアメリカ人だというわけです。

ところが、そうした気持ちが過剰になりがちであるため、イメージどおりにいかないと必要以上の絶望感に襲われてしまいがち。

さらにはそんな状態を繰り返していると「アップ・ダウン・オンリー」な不安定状態になり、その結果、落ち着きのない生活になってしまうのだそうです。

アメリカの高い離婚率や離職率の背景にあるもののひとつも、こうした理想的なイメージと現実との乖離があるのではないかと著者は推測しています。

一方、極端かもしれないけれど、ときには「ダメもと」で就職志望を出してみたり、「ダメもと」で起案してみたりする人が多いなど、現実的な状況を踏まえたアプローチをするのが日本人。

「そんなにうまくいくはずがない」

「ダメでもともとなんだ」

「だったらやってみようじゃないか」

こうした考え方をする日本人は、「絶望」に対する免疫があるというのです。そして、こうしたチャレンジ精神たっぷりの珍しい精神力は、グローバルステージでもきっと強みを発揮するといいます。

「ダメもと」スピリットが、日本人の行動の大きな原動力になっていくだろうということ。(138ページより)

じつは日本人はシャイではない

外国人から見た“日本人の特徴”のなかには、「そんなことないのになあ」と感じるものが少なくないと著者は指摘しています。

たとえば「日本人はシャイ」という見方も、著者の実感とはズレているのだとか。そのため、「日本人ってシャイだよね」と言われても、「いいえ。私が知っている日本人は90%シャイではありません」と返してしまうのだそうです。

その根拠として著者が挙げているのが「カラオケ」。もし日本人が本当にシャイだったとしたら、人前で堂々と歌うカラオケがこれだけ流行することはないということ。言われてみれば、たしかにそうかもしれません。

30年近く、日本で日本人と接してきた著者からすると、日本人はシャイというより「適切な対応ができる人たち」

その場その場のTPOに合わせ、真面目にならないといけない場面では真面目に振る舞い、騒いでもいいときには羽目を外して思いっきり楽しむということです。

場をわきまえ、いまはどういう状況かを適切に見極めることができる。賢明であり、分別がある。そういう姿を見ていると、「日本人は“大人”だな」と思うのだそうです。

私は日本人に「mature」を感じます。 また、日本ほど「civilized」な国は少ないとも思います。 賢明で分別があり、成熟していることを、英語では「mature」といいます。

「civilized」とは、「礼儀正しい、教養のある、洗練された、常識的な」という意味です。 私から見た日本は非常に「civilized」な国。日本人は状況や場に応じて、その場に適切なマナーや対応を即座に判断して、スマートに振る舞えます。

お祝いの席に招かれたときに、どんな服装がふさわしいかや、お祝いのプレゼントはどんなものが喜ばれるかなど、ほかの国の人たちより悩むのが日本人です。 (153ページより)

そんなところに、著者は日本人の「civilized」を感じるというのです。礼儀正しくありたいという意識が強く、そこには上品さも。

「日本人は幼稚だ」というような論調を見かけることもありますが、「mature」であることと「civilized」をつねに意識し、適切に振る舞える日本人こそ、大人として成熟していると著者は分析しています。(152ページより)

「みんなで努力する」ことを選ぶ強さがある

著者は日本のどこで歩いても、人にぶつかってしまう時期が長らく続いていたのだそうです。そして「左側通行を守っているのに、他の人は全然守らない!」といつも怒っていたといいます。

しかしあるとき気づいたのは、自分が考えている左側通行が間違っているということ。自分を起点に考えていたため、左側通行は相手の左肩と自分の左肩がすれ違う歩き方のことだと思っていたというのです。

しかし、そんな経験があるからこそ、日本の左側通行はよく考えられていると感心するそうです。それは渋滞を避けるためのものであり、空港でも駅でも、左側通行のおかげで想像を絶する数の人の動きもスムーズ。

観光客から見ると、日本人は自然に完璧な移動ができるように見えるのだといいます。

ラッシュ時に多くのビジネスパーソンが階段で上り・下りに分かれ、一斉にきれいに歩いている姿を見て、外国人の友人から「まるで川で泳ぐ魚の群れのように美しいね」と言われたことがあるのだそうです。

日本人からすれば当然すぎることですが、そのスムーズな動きを「天性」のもののように考える方がいるということなのでしょう。

同じことは、ワールドカップで有名になった、日本人ファンのスタンド掃除にも言えるといいます。著者が見た動画のなかで「どうしてこういうことをやるの?」と問いかけられた日本人からの返答は、「なんか気持ちがいいから」というものだったというのです。

ちなみに日本に住んで30年経つ著者は、そうした日本人のチームワーク、特に掃除のようにハードな作業のときの一体感は、自然にできている天性のものだと思ってきたのだそうです。

そして日本人の真似をしたいものの、外国人の自分には無理なのではないかと半ば諦める思いもあるのだといいます。

しかしそれは生まれつきや自然にできていることでは決してなく、努力を積み重ねて念入りに計画してやっていること。著者がそれを知ったのは、東日本環境アクセス社(以下「アクセス」)と一緒に仕事をするようになってから。

アクセスはJR東日本グループの1社となり、駅構内の清掃を担当している会社です。モカブラウンと明るいピンク色のユニフォームが印象的なので、東日本の各駅を使ったことのある読者なら見覚えがあるはずです。

日本が世界に誇れる、世界から感動される駅構内の清潔さと整理された姿は、偶然でもなんでもないことを、身をもって完全に理解できました。(160ページより)

著者は同社の社長から「現在、清掃スタッフは外国人観光客からさまざまなことを聞かれます。一時的にでも英語対応ができるように、サポートしてほしい」とお願いされ、2年前から英語対応力アップのためにさまざまな取り組みをしているのだといいます。

その結果、いままでに見たことがなかった、日本的な組織力を知ることになったのだそうです。

まずわかったのは、「駅の清潔感と日本人のチームワークは偶然ではない、自然にできているものではない」ということ。

念入りに研究し、お客様のニーズをていねいに察知し、ひとつひとつの作業を効率よく、ていねいにやろうとする雰囲気をつくり、「当たり前」を意図的につくっているわけです。

そのため著者は、24時間体制のパーフェクトへのこだわりと、仲間を思う一体感をなにより誇りに思っているのだろうとアクセスを評価しているのです。

試合後のスタンドでのグループ清掃、駅構内の清潔さや電車が時刻通りに走ること、これに通じるのは日本人ならではの「組織力」です。

だから、すべて習慣的にやっていることではないと思うのです。 ゴミを拾うための袋をもってきた人、「みんなでやろうよ」と声をかけた人がいたはず。

その声がけに積極的に答え、最後まで仕上げるこだわりをもった方もいたはず。 そして何よりも、それぞれの立場、それぞれの思いをお互い察知できる「空気を読む」力もあるはずです。(161ページより)

だからこそ著者は、日本のユニークなアニメやロボット、ファッションなどを評価する一方、日本ならではの組織力、そして努力から生まれるチームワークを、たくさんのステージで披露してほしいと訴えています。

多くの人が一丸となり、日本のグループ意識をいっそう強めていくべきだとも。(158ページより)




ここで示された「著者の眼に映る日本」をきっかけとして、読者に「日本人である自分自身の目線」を持ってほしいという思いが著者のなかにはあるのだそうです。そしてそこから、世界に向けての日本人としての自信を持ってほしいとも。

慣れ親しんだ日本の本当の魅力を再確認するためにも、読んでみてはいかがでしょうか?

Photo: 印南敦史

印南敦史

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