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耐震・耐放射性から健康機器まで6Way! マンションの一室に置ける民間用シェルターのメーカーに聞くサバイバル

耐震・耐放射性から健康機器まで6Way! マンションの一室に置ける民間用シェルターのメーカーに聞くサバイバル
Image: ライフハッカー[日本版]編集部

日本では地震や台風を筆頭に、自然災害はとどまることを知りません。

また、心配なのは自然災害だけではありません。近年は政治的にも不安定で、ミサイルの脅威も対岸の火事ではない今、生き抜くにはどうすべきなのでしょうか前回の「食」に続いて今回は「」についてフォーカスします。

今回は、日本でいち早く「個人の家で買えて部屋の中に置けるシェルター」の開発と販売を始めた会社、ワールドネットインターナショナルに同社の販売するシェルターについてと、サバイバルについての考えをお聞きしました。

今回インタビューに応じてくださったのは、代表の中嶋広樹さんと営業部の前田慧さん。また、実際にシェルターを購入された個人のお宅に訪問して、体験もさせていただきました。

一般の人が買えるシェルター販売のきっかけ

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ワールドネットインターナショナル代表の中嶋広樹さん
Image: ライフハッカー[日本版]編集部

──御社で扱っているシェルターについて教えてください。

中嶋:『最後の砦』は、防爆耐震耐放射性物質耐生物兵器耐化学兵器という5つの脅威から守ってくれるシェルターで、マンションの一室でも設置することができます。さらに、高気圧酸素の健康機器としても使えるので、6Wayと言えます。

また、津波/水害シェルターウォーターバリア』もあります。そのほかにも複数のラインナップがありますが、現状、すべての災害に対応したシェルターをフルラインで取り扱っているのは国内で弊社だけだと思います。

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5つの防護機能に健康機器としての「6Way」の機能を持つ『最後の砦』定価880万円(税別)
Image: ワールドネットインターナショナル

──個人でシェルターを買えるとは驚きです。販売のきっかけは何ですか。

中嶋:東日本大震災のとき、東京のマンションの43階に住んでいて、大きな揺れを感じました。3カ月後に家族を連れて現地へ行き、あまりの荒廃を見て、衝撃を受けたことがきっかけです。自分にも何かできないかと思い、津波・水害シェルターを作ることにしました。

また、日本は津波だけでなく、地震など自然災害のリスクが高い国です。当時、私は高気圧酸素ルーム・ドームを作っていました。これは、通常の大気圧の1.3~1.5倍にルームの内部を加圧するものなのですが、その際に内部には6トンもの力がかかります。中から圧力がかかるぶん、外からの圧力にも耐えられるため、応用することでできたのが耐震シェルターです。

耐震シェルターかつ健康機器という2Wayの仕様で始まったのですが、その後、北朝鮮の危険性が増したので機能を付加し、現状の6Wayになったのが『最後の砦』です。ちなみに、フィルター以外のパーツの製造や本体の組み立ては、すべて国内で行っているんですよ。

ライフスタイルの一部として使える発想

──健康機器にもなるという発想が面白いですね。

中嶋:高気圧酸素ルームは密閉された環境を作る必要がありますから、放射性物質を含んだ汚染外気から守る機能が必要な核シェルターとして、容易に転用することができたのです。でも、いつくるかわからない災害のために、3畳くらいのサイズのものを部屋に置くなんて、日常的には邪魔ですよね。それなら、健康機器にしたら365日使えるからいいな、と考えました。

──日常でも使えるし、有事の際はもっと使えるということですね。

中嶋:普段は家族で健康のために使い、いざというときは逃げ込んで生き延びようという考えです。エアコンテレビも設置されていますから、シアタールームカラオケルームとしても楽しめますよ。

──普段使っていないと、いざというとき使い方がわからなかったり、不具合が生じたりしそうですが、その心配がないのも安心ですね。

中嶋:はい、日常で無意識のうちに避難訓練ができている、と言ってもいいかもしれません。いざ災害が起こって逃げ込もうとしたら、扉の開け閉め方をはじめ、戸惑ってスムーズにはいかないかもしれませんから、ライフスタイルの一部にするのは理にかなっているんじゃないでしょうか。

──日常の延長となるというと、「避難所に入っている」非日常によるストレスも感じにくいかもしれませんね。

中嶋:この「防災グッズをライフスタイルの一部に」というデザインは、さまざまな企業から「面白い」といわれました。この発想と、商品として具現化したのは私たちが初ではないでしょうか。

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ワールドネットインターナショナル営業部の前田慧さん
Image: ライフハッカー[日本版]編集部

──企業からのニーズもあるのですね。

前田:企業からの問い合わせは増えていますね。たとえば化学薬品を使う製造工場は、万が一薬品が漏れ出たときのリスクヘッジとして、コンプライアンスを重視する意味でも、シェルターは入れたいという考えのようです。

6Wayシェルターのコストパフォーマンス

──設置するのにどれくらいの費用がかかるのでしょう。

中嶋:室内に置く仕様のメリットは費用面にもあります。一般的な地下に穴を掘って埋めるタイプのシェルターは3000万円ほどしますが、これは3分の1程度に抑えられます。車などの購入費用と比較して、これで家族が助かって一人あたりいくらかかるかと考えれば、非現実的な価格ではないと思います。

──サイズはどのようなものがあるのですか。

中嶋:縦、横、奥行きがフルカスタマイズできるので、まず「何人で生き残りますか」という話から始まって、お客様それぞれの人数と部屋のサイズに合わせたオーダーメイドとなります。もちろん、引っ越しの際は解体と再設置もしますし、要望に応じてメンテナンスなどのアフターフォローも行います。

──何年くらいもつものなのですか。

中嶋:大体20年になります。シェルター本体と、組み込んでいるフィルターの耐用年数ということですね。でも、外に設置して雨ざらしにしたら、10年ほどでしょう。

──とはいえ、家の外に設置したい方もいそうですが、可能なのですか。

中嶋:要望によって外に設置することもありますが、プレハブを建てた中に置くので、耐用年数は同じです。

ただ、プレハブの中に置くのは、ほかにも理由があるんですよ。外にそのまま置くと、万一のときに他人が助けを求めて逃げ込んできたら、家族を守れないじゃないですか。高いお金をだして、本末転倒です。なので、内緒でシェルターを作っておこうという意図があります。

──それ、大事ですね。命がかかっているうえに一方的に頼られるのであっても、「助け合い」という言葉のもとに周りから非難されかねないですし。

中嶋:実はかなり肝な部分だと思っています。

津波/水害シェルターシェルターとは

20181025_津波水害シェルター
Image: ワールドネットインターナショナル

──東日本大震災から今年で7年となる間にもたくさん災害が起こりました。反響はいかがでしょうか。

前田:東日本大震災のころは水害/津波シェルターの反響が大きかったものの、ここ1、2年は北朝鮮の関係で、核シェルターに注目が集まっています。

中嶋:それに、今年は水害がありましたから、水害/津波シェルターの問い合わせが増えていますね。

──水害/津波シェルターは、どのような仕組みなのですか。

中嶋:そのときがきたら、シェルターの中に入り、ヘルメットをつけてシートベルトで体を固定し、あとは流されるだけです。水害にしろ、津波にしろ、死んでしまう原因は、濁流に飲み込まれておぼれて息ができなくなることと、流されてきたものがぶつかる衝撃です。家の中にいても安全ではありません。

シェルターの内側はヘルメットの内側のように柔らかくなっていて、上下左右にぶつかっても脳震盪などを起こさないようになっています。外側からの衝撃は、スチール素材による強度に加え、サッカーボールのような多面的な形状で、衝撃を分散する構造です。

「だるま」のように必ず起き上がって水に浮くので、酸素が供給できます。あとは漂っていれば見つけてもらえますからね。

「イスラエル認定」とは

20181025_ヘブライ文字
シェルター内部のパーツに書かれたイスラエルの文字
Image: ライフハッカー[日本版]編集部

──ところで、「6Way」のシェルター『最後の砦』に使われているフィルターは「イスラエル認定」(Israeli Standard 4570の認定)だそうですね。どういうものなのですか。

前田:防災・核シェルター先進国のイスラエルでは、シェルターシステムの基準を定める機関があります。弊社のシェルターに採用しているフィルターを作るイスラエルのメーカーが、細かい基準項目をクリアして、この認定を受けているということです。官公庁各国の軍隊も同じ規格のものを導入しています。

──これを使っている商品は、ほかにもあるのですか。

中嶋:フィルター部分だけをエアコンのように部屋に取りつける『レインボー36V』という商品があります。建物が無事なのを前提としていて『最後の砦』と同様に、炭そ菌などの生物兵器やサリンなどの化学兵器、30キロ圏外なら2カ月の間、放射性物質を防ぐことが可能です。

第二次世界大戦では原爆で怪我をしなくても、被ばくによって後から命を落とした方はたくさんいらっしゃいましたよね。これがあれば、人体に大きな影響をもたらす、放射性物質から発せられるガンマ線が減衰するまでの日数を乗り切ることができます。

価格は300万円です。できることからやろうということで、こちらを購入される方も少なくないですね。とはいえ、爆風などで家の窓ガラスが割れてしまったら、意味をなさなくなるので、『最後の砦』のような万全の備えとはいきません。でも、予算の関係もありますしね。

普段からできること、やっておくべき対策

──『最後の砦』も2週間シェルター内で生活するのが想定のようですが、水や食料、トイレはどうなっているのですか。

前田:食料と水、それに使い捨てのトイレを格納するスペースがあります。放射能などで汚染されていることを想定し、外からは調達せず、備蓄してあるのを使うという考え方です。

最初にシェルターの広さを決めるときに、人間が1日にトイレに行く平均回数から用意すべきトイレの数や常備しておくべきペットボトルの数を提案させていただいています。

──コンシェルジュ的なこともしていただけるのですね。

前田:災害の対策をすべきことはわかっていても、実際に何から用意したらいいのか具体的にわからない人がほとんどです。まずはヒアリングとアドバイスからお手伝いできればと思っています。

──では、「災害対策のプロ」から見た、普段からできる対策を教えてください。

前田:まずはハザードマップを見ておくべきです。住んでいる地域ごとにリスクは異なりますから。それに、福島原発事故のときに放射線物質の拡散予報を見て気づいた方も多いと思いますが、何キロ離れているから大丈夫、ではなく、風向きを意識しておくことが大事です。

また、災害の際は物流がとまるリスクが非常に高く、備蓄は重要です。南海トラフくらいの地震が起きると、首都圏では餓死者がでるのではという話もあります。気づいたら賞味期限が切れているケースが多いので、日常生活に取り入れること。使いまわしをするスタイルだと、新鮮なままキープできますよね。

購入者のお宅に訪問し見せてもらった

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シェルター内部にあるエアコンの室外機は室内に置かれる仕組みになっています。
Image: ライフハッカー[日本版]編集部

今回は、実際に購入者の方に『最後の砦』を見せていただきました。シェルターがあったのは、一般のお宅でよく見る、フィットネス用品が置かれた部屋。「健康器具」「趣味」つながりでしょうか。

20181025_フィルター部分
Image: ライフハッカー[日本版]編集部

中に入って右の奥を見ると、フィルター『レインボー36V』が設置されていました。天井に吸気口がありますが、健康機器として使うときは密閉させる必要があるので、ふだんは閉めておくそうです。横の空間はソファのように座ることができました。

20181025_フィルター部分2
Image: ライフハッカー[日本版]編集部

カバーを開けるとこのようになっており、いざ使うときがきたら天井の吸気口をオープンして、フィルターとホースをつなげます。

20181025_フィルター使用例
実際にフィルターを稼働させている様子
Image: ワールドネットインターナショナル

実際にフィルターを稼働させると、このようになります。

20181025_エアコンとディスプレイjpg
Image: ライフハッカー[日本版]編集部

もう一方、左側の奥にはエアコンディスプレイがあり、快適な温度でカラオケや映画を楽しめるようになっています。

20181025_排気口
Image: ライフハッカー[日本版]編集部

天井には排気口があります。

20181025_シェルター広さのイメージ
Image: ライフハッカー[日本版]編集部

壁は地震のゆれなどで中から体がぶつかっても大丈夫なよう、クッション性がありましたが、床も同様です。面積は2.5畳ほどで、大人が横になって寝ることができます。立つと頭がぶつかりそうな高さでしたが、部屋の天井の高さや使う人に合わせてオーダーメイドされるので、狭い所が苦手な方も心配はいらないでしょう。

購入者にインタビュー

購入者は50代女性で、夫と母と暮らす3人家族。購入のきっかけや、利用についての感想をお聞きしました。

──購入のきっかけを教えてください。

購入者:住んでいる物件が築60年を超え、地震が心配になったのですが、建て替えるのも引っ越すのも費用がかかります。また、母が認知症のため、もしも地震が起こったらすぐに逃げ出すことができません。そこで調べたところ、普段から健康機器として使えて、地震のときはすぐに逃げ込めるシェルターにもなるということで、選択肢にあがってきました。

──健康機器というポイントは大きかったのですか。

購入者:それがなければ、購入していないですね。以前から、高気圧酸素カプセルは使っていましたし、直接お話しを聞いたところ、複数人で高気圧酸素ルームとして同時に使えるうえ、災害対策にもなるところが良いと思いました。現在、購入して1年ほどですが、定期的にメンテナンスもしてもらっているので、信頼感もあります。

20181025_健康器具コントロール
高気圧酸素ルームとして操作するコントロールパネル
Image: ライフハッカー[日本版]編集部

──使い心地はいかがですか。

購入者:健康機器として、日常的に使っています。最近は多くの災害が起こっているので、ニュースを見て怖いなと感じていますが、シェルターがあると安心感がありますし、買ってよかったと思っています。

今後やっていきたいこと

20181025_シェルターとインタビュイー
Image: ライフハッカー[日本版]編集部

──最後に、今後目指していきたいことについて教えてください。

中嶋:日本の核シェルター普及率は、たったの0.02%と言われていますが、民間に普及している数からすると、それをはるかに下回る数値になるはずです。たった3時間で行ける韓国のソウル市の普及率は300%なのに、さらに日本は「原発大国」でもあるのに、です。

金額は普及率を高める大きな要素なので、「隣のおばあちゃん」でも買えるくらいの価格にすることが目標です。集団心理的なものですが、普及数が少ないと変わり者と言われそうだし、買わなくていいやとなりますが、一定数までいくと買ったほうがいいかなとなり、普及率は加速度的に増えますよね。そこまで持っていけたらと。

まずは耐震シェルターを普及できればと思います。この数十年でも地震であれだけの方が被害を受けており、歴史的にも地震大国なのは明らかなのに、対策がほとんどされていません。ようやく国に頼るのではなく、自分で何とかしなければならないという風潮になってきていますから、「耐震シェルターは一家に一台」が一般的なものになればいいなと思っています。

前田:放射性物質が危険だとわかっていても、実際に取り入れたらどうなるかまではわからない方は多いです。核だけでなく、水害や地震など災害に関して、シェルターとともになぜそれが必要なのか知識の普及をすることが、社会への貢献になると考えています。

実は私自身もこの仕事をするまで、災害の実際の怖さや対策についてわかっていませんでした。展示会などで「起きたらどうしようもない」「自分だけ生き残ってもね」という言葉も聞かれます。でも、身を守る術はあるし、リスクも軽減できるということを伝えていきたいです。


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Photo: ライフハッカー[日本版]編集部

Image: ワールドネットインターナショナル 1, 2

取材協力: ワールドネットインターナショナル

今井麻裕美

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