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ニトリ会長が新入社員や20代の若手社員に伝えたいこと

ニトリ会長が新入社員や20代の若手社員に伝えたいこと

ニトリホールディングスの歩みを顧みると、ひたすら快進撃を続けてきたように思われることでしょう。しかし、実際には困難の連続で、特に操業して間もない頃は倒産の危機にも直面し、私は何度も自殺を考えました。 (「はじめに」より)

こう振り返るのは、『リーダーが育つ55の智慧』(似鳥昭雄著、角川書店)の著者。いうまでもなく、2018年2月期で31期連続の増収増益を達成したニトリホールディングスの会長です。

そもそも物覚えが悪く、勉強も苦手。しかも対人恐怖症で接客も非常に下手だったといいますが、それでも成功することができたのは、恩師や妻の助けがあったから。そしてもうひとつ、自身のなかにロマン(大志)があったからだといいます。

1972年にアメリカの人たちの暮らしぶりを目の当たりにして、「日本人の住まいにもアメリカのような豊かさを広げたい」というロマンを私が抱くようになったことが成長の原動力となりました。このロマンを実現させるために、容易には達成できないビジョン(長時間かけて実現したい総合的な到達点の目安)を掲げて、それに向かってがむしゃらに突き進んできたのです。 (「はじめに」より)

重要なポイントは、そんな著者のロマンとビジョンが社内でも共有され、社員たちが一丸となってその実現に取り組んできたこと。その結果、ニトリは店舗数を拡大させ、多方面にわたる商品やサービスをお客様に提供できるようになったというのです。

そして、ニトリが50年かけて進めてきたそれらの取り組みは、どんな組織にとっても参考になるかもしれないと著者は言います。そのため本書では、ニトリが試行錯誤を繰り返しながら実際にやってきたことを明かしているというわけです。

きょうはそのなかから、若い世代に向けたメッセージが書かれた第8章「新入社員、20代の若手社員に伝えたいこと」を見てみたいと思います。

会社のために自分がいると思うな

「自分が会社の成長を牽引していくのだ」という意欲を持つことは、会社にとってありがたいことでしょう。しかし著者は、社員一人ひとりは、会社のために存在しているわけではないと主張しています。あくまで会社は、社員の自己実現のためにあるものだから。

自己実現とは、人間の欲求のなかでも最も高いレベルのものであり、働くうえでのいちばんのモチベーションとなるもの。つまり、単に高い給与や役職がもらえるということだけでは弱いというのです。

最高の褒美となるのは、仕事を通じて社会に貢献できるという達成感。いわば、そうやって自分が大きく成長していくために会社があるということ。

会社は自分が発展するための場となるだけでなく、失敗した場合にはその代償を払ってくれますし、給料まで出してくれます。とことん活用して、自分を目一杯成長させられるのにそれをしないのは損です。(221ページより)

人生の成功において決定的な要素は、その人の「心の持ち方」だと著者は言います。「会社のために働かされている」と思う人と、「自分のために会社はあって、自分の成長のために働いている」と思う人とでは、その後の人生に大きな違いが生じるのは当然だということです。(220ページより)

スタートダッシュが肝心

ニトリでは能力を発揮している人を高く評価し、役職や給料にも差をつけるようにしているのだといいます。つまり年齢や性別は一切関係なく、能力次第でどんどん上を目指していけるということ。

入社後3年間については、あえて評価にもさほど差をつけないようにしているそうですが、だからといって気を抜いてしまうと、その間に大きな後れを取りかねないのも事実。

新入社員や20代の若手の多くは、まだ与えられた仕事をこなすのが精一杯。それがロマンやビジョンとどう結びついていくのかも、ピンとこないかもしれません。しかし、与えられた仕事を遂げることの真意がわかっていないと、怠けたいという欲求にもそそのかされがち。

そういった状況でも無我夢中で取り組んでいる人がいたとしたら、その人は同期入社の仲間たちに大きな差をつけることになるでしょう。つまり、若い頃はわずかな努力の違いで大きな差がつくので、スタートダッシュが肝心なのです。(223ページより)

入社後3年間は評価に差をつけないのは、あくまで見かけのうえでの話にすぎないもの。著者や所属部署の上司たちは、その間の成長ぶりも観察しているわけです。そして、実際に評価を役職や給料に反映させるようになると、案の定、スタートダッシュに成功した人たちが頭ひとつ抜きん出ているものだというのです。(222ページより)

知識は1割、経験が9割

もしも将来、指導する側に立ちたいと望んでいるのなら、経験を重ねていくことが非常に重要だと著者。なぜなら読んだり聞いたりして身につく知識は1割にすぎず、残る9割は経験を通じて体得していくものだから。

そこでニトリでは、できるだけ多種多様な経験を積んでもらうために「配転教育」を続けてきたのだそうです。「既知のことではなく、未知のことに挑戦を続けてこそ、成長は得られる」という考えのもと、多様な職種への異動を繰り返して育成をはかる仕組み。その根底にあるのは、できるだけ多くの社員に、実務経験豊富な指導員となってもらいたいという思いだといいます。

全力投球しながら現場で培っていく経験は、やがて指導者としていろいろな判断を下す際の基礎知識となります。だからこそ、特に若いうちに現場を徹底的に経験することが大切です。(225ページより)

そのためニトリでは、大手企業の5倍もの費用を投じて教育に力を入れているというのですから驚きです。(224ページより)

石の上にも3年、風雪5年、苦節10年、スペシャリスト20年

「石の上にも3年、風雪5年」とは、プロ野球で数々のチームを率いた野村克也元監督の言葉。著者はこれに付け加え、「石の上にも3年、風雪5年、苦節10年、スペシャリスト20年」という表現をよく用いているのだそうです。

どんな会社であっても、そこに10年もいれば自己成長を遂げられるからです。逆から言えば、1つの会社や部署で3年ももたないような人では、どこに異動したり転職したりしても、評価に値する仕事をこなせません。 結局、与えられた仕事に全力投球できない人は、希望の部署や転職先でも満足できず、つねに不完全燃焼を続けているのです。(227ページより)

「石の上にも3年、風雪5年、苦節10年、スペシャリスト20年」は、会社の事業においても言えること。たとえばニトリの台湾進出にしても、最初のうちは赤字が続いていたのだそうです。

しかし著者はそれを、「健全な赤字部門」と捉えていたのだといいます。なにごとも挑戦したばかりのころは苦戦を強いられるもので、最初から「風雪5年」だと思って取り組んでいるから。その証拠に、台湾事業は初出店から6年で黒字化を果たすことに。(226ページより)

仕事は自分で選ぶな

「自分のことは自分がいちばんよく知っている」と言いますが、それはだと著者は断言しています。自分が見ているのは鏡を通した自分であり、特に仕事の適性については、自分自身で正しい判断をするのは難しいものだから。

ちょっと手を染めただけで、すぐに「自分には合わない」などと弱音を吐くのは言語道断。最低でも3年間はその仕事に取り組んだうえで口に出せる台詞(せりふ)です。 最初の1年でひたすら仕事を覚え、2年目で完全に果たし、3年目でスピードアップを図っていくのです。そのうえで、「やっぱり合わない」と感じたなら、他の部署への異動を希望すればいいでしょう。(229ページより)

つまり、ニトリが一貫して「配転教育」を続けているのも、一人ひとりの社員の適材適所を見極めるため。そして、配転のタイミングも3年を目安にしているのだといいます。(228ページより)

問題がないのは問題

「特に問題は見つからない」と簡単に口に出す人がいますが、「問題がないと捉えてしまうことが問題だ」と著者は考えているのだそうです。20代のうちから問題意識を持たない人に進歩は望めず、堕落していくだけだとも。ただし実務経験が乏しいと問題点が見えないため、現場経験の蓄積が威力を発揮するわけです。

実際、20代の私はまだロマンとビジョンに出合っていなかったので、問題意識がまったくなくて失敗続きでした。「問題がないのは問題」ということに気づかず、結局は自滅していたわけです。(231ページより)

ニトリがお客様の不平、不満、不便から問題の本質を探り当て、それらを解決する商品を開発しているように、自分自身がユーザーの立場に立って見つめなおすことを心がけてほしい。著者はそう呼びかけています。そうすれば、どこに問題があるのかがわかり、自分自身の進歩に結びついていくから。(230ページより)




他にも「仕事とはなにか」「上に立つ人の心構え」「部下の育て方」「自分の変え方」などなど、若手からリーダー、そして経営陣までに響く多くのメッセージが記されています。だからこそ、役職や立場に関係なく、多くの人に役立つ1冊だと言えそうです。

Photo: 印南敦史

印南敦史

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