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ビジネスメールで「大和言葉」を使った方がいい理由

ビジネスメールで「大和言葉」を使った方がいい理由
Photo: 印南敦史

ビジネスシーンにおいて、伝えたいことを直言せず、間接的な表現で伝えたいということはよくあるもの。そんなとき日本古来の言葉である「大和言葉」を使うと、堅苦しい印象を与えがちなビジネスメールなどの文章も、相手に受け入れられやすくなる。そう主張するのは、『仕事で差がつく言葉の選び方』(神垣あゆみ著、山岸弘子監修、フォレスト出版)の著者です。

大和言葉というと、「いとおかし」とか「かたはらいたし」「あわれなり」といった古語を想像するかもしれませんが、古語だけを指すのではありません。(中略)一般的には中国由来の「漢語」、主に欧米から入ってきた「外来語」に対して、日本古来の言葉(和語)を指します。(「まえがき あなたのビジネスをワンランクアップさせる言葉」より)

たとえばビジネス文書で「平素より格別なご愛顧を賜り、厚く御礼申しあげます」といったお礼の一文を見かけることがありますが、これだと漢字が多く、堅い印象があります。では、これを大和言葉で書き換えてみたらどうなるでしょうか?

・ひとかたならぬお引き立てをいただき、心からお礼を申しあげます。

・お引き立てにあずかりまして、ありがたく存じます。

・いつもお心にかけていただき、ありがとうございます。

(以上、「まえがき あなたのビジネスをワンランクアップさせる言葉」より)

このように大和言葉を使うと文章がやわらかくなり、やさしい印象を与えることが可能。ビジネスのやり取りに関しては、はっきりものを言いすぎると角が立ち、相手との関係がぎくしゃくすることもあり得ます。そんなとき、大和言葉で湾曲に伝える術を知っていれば、メールや電話などの「顔の見えない相手」との不要なトラブルを避けられるということ。

そこで本書では、「お礼・感謝」「謝罪・反省」「依頼・提案」「紹介・仲介」「意見・抗議」「謙遜・配慮」「称賛・評価」「報告・連絡」「贈答」「もてなし」「感情に訴える」とさまざまなシチュエーションごとに適切な大和言葉を紹介しているわけです。きょうは、なかでも特に難しい「断り・拒否」を伝えるためのフレーズを、いくつかピックアップしてみたいと思います。

あいにく

類語:折悪しく 間が悪い

意味:ちょうどそのときに都合が悪い様子

(41ページより)

「あいにく」は、相手の依頼に答えられないときに添えるとよい一言。意に反して不都合な状態にあることを指します。

ちょうど他の案件と重なっておりまして、対応できなくてすみません。

あいにく他の案件と重なっておりまして、お役に立てず申し訳ありません

「無理」「できない」とただ断るだけでなく、「あいにく」を添え、断る理由を伝えるということ。また、対応できないからといって「すみません」で片づけず、「お役に立てず申し訳ありません」とすると、ていねいな表現になるわけです。

正 あいにくその日は午後から出張のため、午前中に打ち合わせをお願いできますか?

「午後から出張なので、無理です」とはっきり断ると拒絶の印象しかなく角が立ちますが、緩衝材になる「あいにく」を使うと角が取れ、やんわりとした印象に。「午後は難しいが、午前は大丈夫」と代替案を提示することも忘れずに。(41ページより)

いかんせん

類語:残念にも 残念ながら どうしようにも

意味:どうにもならないことに

(42ページより)

「いかにせむ」が変化したものが「いかんせん」。「よい方法が見出せず、どうしようもない」と途方にくれる状態を指すのです。そのため「なんとかしたいけれど、自分の力が及ばない状況であきらめざるを得ない」「自分はそうしたくても実行できる立場にない」といった無念を伝える際に使うということ。

さすがに期日までに時間がなく、対応しきれません。

いかんせん期日までに時間がなく、対応しきれません。

現実問題として、手の施しようがないことを「いかんせん」を使って伝えるということ。「さすがに」だと、責任逃れ、他責の気配を感じ取る人もいるかもしれません。

正 いかんせん今の私の立場では、これ以上、現場のスタッフを増やすことはかないません。

気持ちのうえでは実行に移したいところだが、立場的にそれが不可能であることを伝える場合も、「いかんせん」を使うといいそうです。(42ページより)

心ならずも

類語:やむを得ず やむなく 不本意ながら

意味:自分の本意ではないけれど、しょうがなく

(46ページより)

断るときに使うことで、「事情があって、どうしてもそれができない」という含みを伝えるということ。また、相手の期待に応えられなかったときや、自分の思いに反して相手に迷惑をかけてしまったときに使う言葉でもあるそうです。

どうしようもなく、このたびの出展は見送ることにしました。

心ならずも、このたびの出展は見送ることにしました。

例年、出展していた展示会に、今回は出展しないと断りを入れる場合の例。相手からの期待などを無にすることになるため、「今回は出展しません」という直接的な表現を避け、「心ならずも」「見送る」という間接的な表現を。

正 佐藤部長から直々にお声がけいただいたのですが、心ならずもお断りした次第です。

正 私の発言で、心ならずも多くの方を傷つけたことをお詫びします。

このように、詫びる場合にも「心ならずも」を使用。自分ではそんなつもりはなかったのに、気持ちに反して悪い結果になってしまった、という心情を伝えるわけです。(46ページより)

抜き差しならない

類語:のっぴきならない

意味:処置の施しようがない

(52ページより)

ピンチの度合いが高まって、深刻なさまを示すときに用いる言葉。「抜き差し」とは、抜き出すことと差し込むこと。それがうまくできず、どうにもならない状態だということです。

委員会がまずい状況に追い込まれており、これ以上活動を続けるのは困難です。

委員会が抜き差しならない状況に追い込まれており、これ以上活動を続けるのは困難です。

「抜き差しならない」を使うことで、すぐに解決策が見つかるような状況ではないことを伝達。「まずい」でも状況は伝わるでしょうが、社会人としては幼稚な印象があります。

正 抜き差しならない事情があり、今回の出演は辞退いたします。

「詳しくは言えないが、深刻な問題や事情を抱えていること」を「抜き差しならない」という言葉で伝えるわけです。(52ページより)

やむなく

類語:心ならずも やむを得ず 涙をのむ

意味:仕方なく

(57ページより)

「やむなく」は、形容詞「やむない」の連用形。どうしようもない、やむを得ない、という意味です。都合や事情があり、断るしかないというとき、「お断りします」「欠席します」などの前につけて用います。

今回はそういうわけで欠席することをご理解ください。

今回はやむなく欠席することをご理解ください。

欠席、不参加をせざるを得ない理由を述べたのち、この一文で締めくくるということ。

正 以前、ご依頼をいただいたとき、出張の日程と重なり、やむなくお断りした経緯があります。

過去になぜ断ったのかを説明する文。依頼を受けられず、残念であったという気持ちを伝えます。(57ページより)




タイトル上部に記載されている「辞書のように使える!」というフレーズに偽りなし。デスクサイドに置いておけば、言葉の使い方でまよったときにきっと役立つはずです。

Photo: 印南敦史

印南敦史

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