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持続的で合理的。オランダに移住した農業トランスレーターが語る、オランダの5つの魅力

持続的で合理的。オランダに移住した農業トランスレーターが語る、オランダの5つの魅力
Photo: 水城 悠

日蘭通商航海条約の恩恵から、フリーランスの移住先として人気のオランダ。美容師、ネイルアーティスト、ライター、デザイナーなど、様々な職種の方が移住をしています。

今回の記事では、2016年にオランダに移住し、農業トランスレーターとして活動する、水城 悠さんをご紹介します。

なぜオランダを選んだのか?など、実際に移住して感じた、オランダの魅力についてご紹介します。

水城 悠(ミズキ ユウ)さん

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ブログ / Facebook / Twitter

福岡県出身。米国大学の経営・マーケティング学部を卒業後、東京にてマーケティング業に従事。その後マレーシアに移住し、海外投資コンサルティング会社にてセールスとコンサルティングを担当。2016年よりオランダへ移住。オランダから日本の農業・食に貢献すべく、フリーランスとしての活動を開始。海外歴7年(アメリカ・マレーシア・オランダ)、TOEIC920点、剣道二段。農業世界一のワーヘニンゲン大学にて施設園芸コース修了。

オランダ農業視察についてはこちら、その他のお問い合わせはこちらにご連絡ください。

オランダに移住したきっかけはライフハッカー

オランダ移住のきっかけは、ライフハッカーです。元々、私も妻もヨーロッパに住みたいと思っていたので、記事を見てオランダに住もうと決めました。特に妻は、以前イギリスで働いた経験があり、結婚する際に「いつかヨーロッパに住みたい」と言っていました。

これまで私はマーケティングや投資コンサルティング業界でキャリアを積んでいたのですが、もっと生活に強く関わる「農業」や「食」の分野に携わりたく、移住時に思い切ってキャリアチェンジをしました。

移住先にオランダを選んだのは、日本人フリーランスが開業しやすいことに加え、日本の各メディアでオランダ型の最先端な農業が取り上げられ、注目されていたことも理由の一つです。

2017年オランダ移住の状況は?

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運河と街並みが美しいアムステルダム
Photo: 水城 悠

移住ブームはやや鎮まったと感じます。以前はフリーランスビザを取得していれば、起業した事業だけでなく他の会社での就労もできました。

例えば、webデザイナーとしてフリーランスビザを取得し、本業と併行して飲食店でパートタイムをするなど。

本業以外で収入を得ることも可能だったため、相当な数の日本人が移住されたのではないでしょうか?

私は2016年8月にオランダに渡航し、10月にビザを取得しました。情報収集含め、準備期間は1年ほどです。また、オランダに来てからはビザ取得のために弁護士さんを通しています。

農産物輸出額は世界第2位!世界が注目するオランダ農業

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QS世界大学ランキングの「農業&森林学」部門で2016・2017年に1位となったワーヘニンゲン大学でのLEDを使った研究
Photo: 水城 悠

オランダの農産物の輸出額は、アメリカに次いで世界第2位。オランダの国土面積が日本の九州程度の規模であることを考えると、これは驚異的です。

オランダは国土が狭いことに加え、国土の4分の1が干拓地。このため、農産物の「選択と集中」を行うことで世界と競争してきました。

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20ヘクタール(東京ドーム約4つ分)のパプリカ農家。 収穫機は自動で選別場へ向かい、帰りは空箱を持ってくる。
Photo: 水城 悠

例えば、オランダはトマト、パプリカ、キュウリの三品目がハウス栽培野菜の約8割の栽培面積を占めています。ドイツとフランスなどのヨーロッパの大きな市場が近くにあるという地理的強みを活かし、収益性の高い野菜に集中して生産を行い、輸出しています。国全体で特定の作物に集中したことで、生産スキルや関連技術が飛躍的に向上した経緯があり、現在も進化を続けています。

さらに、これらの野菜はガラスハウスで栽培されているため、コンピューターが自動で温度・湿度・二酸化炭素濃度などをコントロールし、植物に最適な環境をつくりだすことが可能です。

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10ヘクタール(東京ドーム約2つ分)のトマト農家。補助光を使うことで冬の間でも生産可能。害虫を食べてくれる天敵昆虫を使った無農薬栽培をしている。
Photo: 水城 悠

オランダでは、特にこのガラスハウスでの栽培(施設園芸)の技術が発達していて、世界でも有名です。私が修了したワーヘニンゲン大学の施設園芸コースは、世界16カ国もの生徒が参加していました。南米、アフリカ、ヨーロッパ、アジアから集まった生徒たちが、講義を受け、ディスカッションを行います。なかには、難民キャンプ用の園芸施設を作るために国連から派遣された方もいらっしゃいました。

オランダ農業トランスレーターの仕事とは?

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視察ツアー先のオランダ大手コンサルティング会社試験場。 最新のLEDを活用して質を保ったまま収量の増加を実現。
Photo: 水城 悠

オランダでは農業トランスレーターとして活動しています。ここでいう「トランスレーター」とは、単なる言葉の通訳だけではなく、お客様に必要な情報・人・モノ・機会を「つなぐ」ことを意味しています。

事業内容を簡単にご説明すると、

・オランダ型の最先端の農業を学ばれたい企業や個人の方を対象とした農業視察のサポート(コーディネート・通訳)

・ワーヘニンゲン大学の講義や視察プログラムの通訳とアテンド

・日本の農業関連企業の商談サポート

・オランダ農業企業の日本進出サポート

など。

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オランダのトマト栽培見学施設にてガイドの方と。
Photo: 水城 悠

私の強みは、自身がワーヘニンゲン大学でのコースを修了した上で、これまでに多くの農業視察を行っているため、現地で学んだことを踏まえて通訳とアテンドができる点です。また、農業に特化しているため、一般的な通訳より、多くの知識やサービスを提供できる自信があります。

経営スローガンは「農と食で日本と世界の懸け橋に」。オランダ現地から日本の農業に貢献できる存在でありたいと思っています。

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農業大学世界ランキング1位のワーヘニンゲン大学
Photo: 水城 悠

移住歴2年目。水城さんが感じるオランダの魅力とは?

■1.サステイナブル(持続可能)で、環境への配慮がすごい

オランダ農業といえばその収穫量の多さ(トマトだと日本のハウス栽培の4−5倍の収穫量といわれている)が有名ですが、さらに「サステイナブル(持続可能)である」点も大きな特徴の一つ。例えば、2018年1月から施行される政策では、ガラスハウスからの農業排水に含まれる農薬の95%は浄水処理をしてから自然に戻すことが義務付けられています。

ちなみにこれは、2022年からヨーロッパ全体で実施される施策(農薬排出を完全にゼロにする)です。オランダはヨーロッパ諸国に先駆け来年から取り組みます。そのほかにも昆虫や鳥などの生態系を守るために、夜間のハウスからの光は外に漏らしてはいけないなど、とても環境に優しく、学べば学ぶほどすごいと感じ入ります

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地上34メートルの屋上農園。魚を育て、そのフンを野菜の養分にする循環型農業のアクアポニックス栽培。サステイナブルな農業の一つ。
Photo: 水城 悠

また、オランダではオーガニック食品・商品がとても身近です。例えば、オランダで有名な食品店「ekoplaza(エコプラザ)」は商品全てがオーガニック。Marqt(マルクト)というおしゃれなオーガニック食品店もあります。オランダと言えばチーズやワッフルが有名ですが、お土産品としてオーガニック商品、食品もおすすめです。

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全商品がオーガニックのekoplazaの有機野菜。調味料、乳製品、お酒、ペットフードまで全てオーガニック。
Photo: 水城 悠


■2.資源を無駄にしない、合理的で、効率的な思考。

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水城さんのご友人のトマト農家。収量は90トン/1反(約1,000平米)と、単位面積あたりの収量はなんと日本の約4−5倍!
Photo: 水城 悠

上記の「サステイナブル(持続可能)」にも関連しますが、オランダは限られた資源を有効的に使います。例えば、従来の露地栽培(畑)でトマト1kgを作るためには約60Lの水が必要です。それがオランダの通常のガラスハウスでは約15L。最新の施設だと約4L。

その日の気候環境に合わせてコンピューターが必要な分だけの水と養液を与え、排水も回収・浄水して再利用する設備や技術などがこれを実現しています。これは高価な液体肥料などコスト削減にもつながりますし、水や鉱物(肥料の原料)などの限られた資源を効率的に使い、無駄にしません。水不足が地球規模で問題視されている中、オランダ型農業は将来の食料生産にとってより重要な役割を担っていくと思います。

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Photo: 水城 悠

また、温暖化への影響が危惧されている二酸化炭素を有効活用する仕組みも。ヨーロッパ最大の港をもつロッテルダムでは、石油精製工場などから排出される二酸化炭素を、オランダ南部のガラスハウスにパイプラインを使って供給しています。二酸化炭素の排出には費用が必要です。このパイプラインは、費用を節約したい企業と、植物の生育に必要な二酸化炭素を欲する農家の方々のニーズをマッチングさせており、現在600軒ものガラスハウスに二酸化炭素が供給されています。


■3.”みんなで行けば遠くに行ける”。協力の文化。

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Image: GLF Media/Shutterstock

オランダの歴史は、干拓と治水の歴史です。政府も国民も、みんなで協力しなければ、災害に立ち向かうことはできませんでした。

アフリカのこんな諺をご存知でしょうか?

”はやく進みたければひとりで行け。遠くまで進みたければみんなで行け。(If you want to go fast, go alone. If you want to go far, go together)”

オランダで過ごしていると、「みんなで行けば遠くに行ける」「お互い協力し合おう」という意識が浸透していると感じます。

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バラ農家の視察風景。4.3ヘクタール(東京ドーム約1つ分)の農場でバラを一日3〜4千本収穫。オランダはバラなどの花の輸出でも世界的に有名。
Photo: 水城 悠

例えば、私の友人のトマト農家は生産者同士で生産者組合を作り、オンタイムでお互いの農場のデータを共有しています。コンピューターで全てを管理・共有することでお互いに学び合うことが可能です。信頼し合える仲間同士で情報を共有することで成長し、”より遠くにいける”という考え方です。

ただこれは、ITの導入があってからこそできること。ITを活用することで情報が”見える化”され、それが共通言語になります。学び合うことができるのです。

また、ワーヘニンゲン大学をはじめとする研究機関、農業関連企業、そして政府の強固な「産学官連携」など、オランダはイノベーションの促進も得意としています。

オランダは、”皆に伝える術と意識”を持ち、共に成長しようとする姿勢があると言えるでしょう。


■4.オープンで優しいオランダ人の気質

オランダに来て感じたことは、気質がオープンで、優しいということです。オランダ人はとても親切。

私たち外国人にもとても寛容で(英語が通じることもありがたい)、また道に迷ったりした時や、何か困っている時ももよく声をかけてくれます。

個人的な見解ですが、この気質に関しても、みんなで協力しながら生きてきた歴史が関係しているように感じます。


■5.個人の自由を尊重、家族を大切にする文化がある

オランダは、個人の自由を尊重する文化があります。

安楽死が認められていることも有名ですが、個人的な話では、妻の出産に際して、自然分娩と無痛分娩を出産中に切り替えることができました。日本ではまだまだ痛みを伴ってこその出産という認識があるかと思います。そういった意味でオランダはとても中立的、個人に選択の自由があるようです。

さらに、夫は出産に立ち会えるだけではなく、へその緒を切らせてもらえます生まれたままの状態で、抱っこさせてもらうこともできました。ちなみに日本では、出産直後に赤ん坊の身体を拭いてからお母さんが子どもを抱くそうですが、オランダでは拭かずに、生まれた状態のままですぐに抱っこをさせてもらいます。

こういったスキンシップだけではなく、出産前から父親は子供とのかかわり合いに参加が奨励されています。例えば、出産前に両親で参加する勉強会。日本でも同様の取り組みはありますが、平日の昼間であることが多いです。一方、オランダは、夕方のため両親が二人とも参加できます。このように、「育児への父親の参加は、子どもにとっても、母親にも良い」と、家族を大切にする文化があります。


いかがでしょう。農業に従事するフリーランスの視点で、オランダ移住やオランダ農業、文化の魅力について水城さんに語っていただきました。私自身もオランダで半年過ごしてみて、シンプルで環境に優しい暮らしや、オランダ人の人生を楽しむ姿勢にとても影響を受けています。

海外移住を検討していらっしゃるフリーランスの方や、農業の技術を学びたい方にとって、オランダは有力な選択肢の一つになるでしょう。

水城さんが提供するオランダ農業視察についてはこちら、その他のお問い合わせはこちらにご連絡ください。

最新のオランダ農業情報をブログ / Facebook / Twitter で発信しています。

佐藤まり子ブログTwitter

フリーのライター&Webディレクター。2017年5月にオランダに移住し開業準備中。オランダでは剣道セレクトショップBUSHIZO海外版をオープン予定。持っている資格は剣道五段、TOEIC880点。趣味は旅行と読書と寝ることとです。細かいことを気にしない性格です。

Photo: 水城 悠

Image: GLF Media/Shutterstock

佐藤まり子

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